災害が起きたらまず何を?高齢者と家族のための初動ガイド:安全確保と落ち着くための第一歩
はじめに:災害が起きた、その時どうする?
地震や台風など、いつ起こるかわからない災害は、誰にとっても不安なものです。特に、体力が心配な方や、すぐに動くことが難しい高齢者の方、そしてそのご家族は、「いざという時、まず何をすれば良いのだろう」と、大きな不安を感じることもあるかもしれません。
テレビやラジオで「落ち着いて行動してください」と呼びかけられても、実際に揺れや風雨の音を聞くと、どうしても慌ててしまうものです。しかし、災害発生直後の「初動」と呼ばれる最初の行動は、ご自身の安全を守るために非常に重要です。
このガイドでは、災害が起きたその時、高齢者の方が、そして離れて暮らす家族も含めて、どのように対応すれば良いのか、落ち着いて安全を確保するための具体的なステップを分かりやすく解説します。事前に知っておくことで、いざという時の不安を少しでも和らげ、適切な行動をとる助けになることを願っています。
災害発生直後のための「初動」ステップ
災害の種類(地震、台風、大雨など)によって取るべき具体的な行動は少し異なりますが、まず共通して大切なのは「落ち着くこと」です。そして、ご自身の安全を確保することが最優先です。
ステップ1:まずは身の安全確保(揺れや風雨がおさまったら)
- 頭を守る: 地震の場合は、まずクッションやカバンなどで頭を保護します。家具などが倒れてくる可能性があるため、できるだけ頑丈なテーブルの下などに身を隠しましょう。
- 無理に動かない: 大きな揺れや強風の最中に無理に動くと、転倒したり、飛来物で怪我をしたりする危険があります。揺れがおさまってから、周囲の状況を確認して行動を始めましょう。
- 慌てない: 突然の出来事に驚くのは当然ですが、深呼吸をするなどして、できるだけ落ち着くよう努めましょう。焦りは思わぬ事故につながることがあります。
ステップ2:自宅の安全確認(落ち着いてから、無理のない範囲で)
身の安全が確保できたら、次に自宅の状況を確認します。
- 火元の確認: ガスの元栓や、電気のブレーカー(電気のスイッチ元)を確認します。特に地震の場合、ガス漏れや電気のショートによる火災を防ぐため、可能であれば元栓を閉めたり、ブレーカーを落としたりします。ただし、無理は禁物です。
- 危険箇所の確認: 天井から物が落ちていないか、ガラスが割れていないか、家具が倒れかかっていないかなど、周囲に危険な場所がないかを確認します。足元にも注意しましょう。
- 避難経路の確認: 玄関や窓など、外へ出るための扉が開くかどうかを確認します。物が散乱していて通りにくい場合は、安全に通行できるか確認します。
- 家族や近所への声かけ: もし一緒にいる家族や、近くに住む知人がいれば、声かけをして安否を確認します。お互いに助け合うことが大切です。ただし、ご自身の安全が最優先です。
ステップ3:信頼できる情報源からの情報収集
正確な情報を得ることが、その後の適切な行動につながります。
- 情報収集手段:
- テレビ、ラジオ: 災害に関する最新の情報(被害状況、避難情報、交通情報など)を得るための基本的な手段です。電池式のラジオがあると、停電時にも役立ちます。
- 固定電話、携帯電話: 家族や知人との連絡に使いますが、災害時は回線が混み合い繋がりにくくなることがあります。
- 災害用伝言ダイヤル(171)や災害用伝言板サービス: 家族の安否確認に有効なサービスです。使い方を事前に確認しておきましょう。
- 地域の広報、防災無線: 自治体からの重要な情報が伝えられます。
- インターネット、SNS: スマートフォンやパソコンが使える場合は情報源となりますが、不確かな情報(デマ)も拡散されやすいため、自治体や国の公的機関が発信する情報を中心に確認することが重要です。
- 確認すべき情報:
- ご自身がいる地域の被害状況
- 気象情報(今後の雨や風の予測など)
- 自治体からの避難情報(避難指示や避難場所の開設情報など)
ステップ4:避難するかどうかの判断と準備
集めた情報や自宅の安全状況をもとに、避難が必要かどうかを判断します。
- 判断の基準:
- 自宅の安全が確保できない(建物が損壊している、浸水や土砂崩れの危険がある場所にあるなど)。
- 自治体から避難指示が出ている(特にご自身の地域に)。
- 体の調子が悪い、持病が悪化しそうなど、健康上の不安がある。
- 一人で判断せず相談する: 避難が必要かの判断は難しいため、家族や近所の人、または地域の相談窓口(自治体の防災担当部署など)に相談することを検討しましょう。
- 避難の準備: 避難が必要になった場合は、事前に準備しておいた「非常持ち出し袋」を持って行きます。動きやすい服装に着替え、防寒対策なども考慮しましょう。
ステップ5:離れて暮らす家族との連絡(無理のない範囲で)
離れて暮らす家族がいる場合は、お互いの安否確認を行います。
- 事前に決めた方法で: 災害用伝言ダイヤルや、事前に決めておいたSNSグループなど、連絡がつきやすい方法で連絡を試みます。電話回線が混雑していても、これらのサービスなら繋がる場合があります。
- 無理はしない: 連絡がすぐにつかなくても、必要以上に焦らないことも大切です。相手も安全確保に努めている最中かもしれません。安否確認ができたら、簡単なメッセージで済ませるなど、回線の負担を減らす配慮も必要です。
- 離れた家族ができること: 離れていても、自治体のホームページなどで現地の災害情報を確認することができます。また、安否確認の方法を事前に家族で話し合っておくことが、いざという時の安心につながります。
初動で確認することチェックリスト
災害が起きた直後に、落ち着いて確認するための簡単なチェックリストです。ご家族と一緒に確認しておきましょう。
- □ 身の安全は確保できているか? (頭を守ったか、揺れがおさまってから動いているか)
- □ 自宅に危険な場所はないか? (火元、割れ物、倒れそうな家具など)
- □ 外へ出るための戸(玄関など)は開くか?
- □ テレビやラジオなどで情報を集めているか?
- □ 自治体からの避難情報は確認できたか?
- □ 避難が必要かどうか、家族や近所と相談できたか?
- □ 離れて暮らす家族と、事前に決めた方法で連絡を試みたか?
このリストを、目につきやすい場所に貼っておくことも有効です。
まとめ:日頃の準備が初動の助けに
災害発生直後の初動は、不安の中で行う難しい行動です。しかし、「まず何をするか」を事前に知っておき、ご家族や地域の方と共有しておくことで、いざという時に落ち着いて行動できる可能性が高まります。
今回ご紹介したステップは、災害対策の第一歩です。この「初動ガイド」を参考に、ぜひご家族で話し合い、ご自宅の状況に合わせた具体的な行動を確認してみてください。
もし、準備や計画について不安なこと、分からないことがあれば、お住まいの市区町村の役場にある防災担当の窓口や、地域の社会福祉協議会などに相談してみることも考えてみましょう。地域には、高齢者の防災に詳しい専門家や、支え合いの仕組みがある場合があります。
一人で抱え込まず、周囲に頼ることも大切です。日頃からの少しずつの準備と、正しい知識を持つことが、災害発生時の安全につながります。