災害時のトイレ問題:高齢者と家族のための具体的な備えと対策
災害時、トイレの備えはなぜ大切なのでしょうか
大きな災害が起きた時、電気や水道が止まってしまうことがあります。そうなると、普段使っている水洗トイレが使えなくなり、衛生状態が悪化する心配が出てきます。特に高齢の方にとっては、頻繁な排泄や移動の負担、清潔を保つことなどが課題となるため、トイレの備えは大変重要です。
「避難計画は考えたけれど、トイレのことはあまり意識していなかった」という方もいらっしゃるかもしれません。しかし、事前に準備をしておくことで、いざという時も落ち着いて対処できます。ここでは、高齢者ご本人とご家族のために、災害時のトイレに関する具体的な備えと対策をご紹介します。
災害時にトイレが使えなくなる理由と高齢者の課題
災害時にトイレが使えなくなる主な理由は、以下の通りです。
- 断水: 水道が止まると、水を流して汚物を処理できなくなります。
- 停電: 電動ポンプを使用している場合など、電気がないと水が流せないことがあります。
- 下水道管の損傷: 地震などで下水道管が壊れると、汚物が流れなくなり、逆流の危険もあります。
このような状況で、高齢者の方々が特に直面しやすい課題には次のようなものがあります。
- 頻繁な排泄: 夜間も含め、トイレに行く回数が多い場合があります。
- 移動の困難: 体力や筋力の低下により、安全な場所まで移動したり、和式トイレを使用したりするのが難しくなることがあります。
- 排泄介助の必要性: 介護が必要な方の場合、介助者の負担が増加します。
- 衛生状態の悪化: 清潔を保つことが難しくなり、感染症のリスクが高まります。
- プライバシーの確保: 避難所などで多くの人が共同生活を送る場合、プライバシーの確保が課題となります。
これらの課題を少しでも軽減するために、事前の備えが非常に大切です。
具体的なトイレの備え(自宅・在宅避難の場合)
自宅で被災した場合や、自宅に被害が少なく在宅で避難生活を送る場合でも、トイレが使えなくなる可能性は十分にあります。自宅での備えは、そのまま在宅避難の備えにもなります。
1. 簡易トイレ・携帯トイレの準備
最も一般的で有効な備えは、簡易トイレや携帯トイレです。
- 携帯トイレ: 便器にかぶせて使う袋と凝固剤がセットになったものが主流です。汚物を素早く固めて、臭いを閉じ込めます。使い方も簡単です。
- 簡易トイレ: 段ボールなどでできた組み立て式のものや、既存の洋式便器にセットして使うものなどがあります。携帯トイレの袋をセットして使用します。
- ポータブルトイレ: 普段から使用している場合は、そのまま災害時も利用できます。非常時は、バケツ部分に凝固剤を入れた袋をセットして使用することを検討します。
どれくらい必要?
一人一日あたり5回トイレに行くと仮定し、最低3日分(15回分)の凝固剤付き携帯トイレを用意するのが一般的です。一週間分(35回分)あるとより安心です。ご家族の人数分を忘れずに計算してください。
2. 消耗品・衛生用品の準備
簡易トイレ・携帯トイレと合わせて用意しておきたいものです。
- トイレットペーパー: 多めに備蓄します。
- ウェットティッシュ: 手洗いができない場合や体を拭くのに役立ちます。
- 消臭袋・汚物袋: 処理した汚物を捨てる際に、臭いを漏らさない袋があると安心です。
- 水: 手洗い用や簡易トイレの処理用に、飲料水とは別に用意しておきます。
- アルコール消毒液: 手指消毒に利用します。
- 使い捨て手袋: 排泄介助や汚物処理の際に使用します。
- おむつ・尿パッド: 普段使用している場合は、多めに備蓄します。
- 清拭剤: 体を拭いて清潔を保つために使用します。
3. プライバシー確保の工夫
トイレの場所を確保する際に、目隠しがあると落ち着いて用を足すことができます。
- 目隠し用のシートや布: 突っ張り棒などを使って間仕切りを作ります。
- 段ボールなど: 周囲を囲むように立てて簡易的な個室を作ります。
災害時のトイレの備え(避難所の場合)
避難所に避難した場合でも、多くの人が共同で使うためトイレが混雑したり、衛生状態が悪化したりすることが考えられます。
- 避難所への持ち出し袋に携帯トイレを数回分入れておく: 避難所までの移動中や、避難所に着いてすぐトイレが使えない場合などに役立ちます。
- 個人用の衛生用品を用意する: ウェットティッシュ、アルコール消毒液、使い捨て手袋、おむつや尿パッドなどは、避難所生活でも必要になります。持ち出し袋に入れておきましょう。
- 避難所のトイレの場所とルールを確認する: 避難所のスタッフに確認し、利用上の注意を守りましょう。
- 福祉避難所について: 要介護の方や特別な配慮が必要な方は、福祉避難所への避難も検討できます。福祉避難所では、一般の避難所よりも手厚いケアや設備が提供される場合があります。事前に自治体に確認しておくと良いでしょう。
今すぐできるトイレの備えチェックリスト
ご家族と一緒に、以下の項目を確認し、準備を始めてみましょう。
- 簡易トイレ・携帯トイレを用意しましたか?
- □ 家族の人数×日数分の凝固剤付き携帯トイレを計算しましたか?
- □ 設置場所や使い方も確認しましたか?
- 消耗品・衛生用品を用意しましたか?
- □ トイレットペーパー、ウェットティッシュ
- □ 消臭袋、汚物袋
- □ 手洗い用の水、アルコール消毒液
- □ 使い捨て手袋
- □ 普段使用しているおむつや尿パッド(多めに)
- □ 清拭剤
- プライバシー確保の方法を考えましたか?
- □ 目隠しになるシートや布、段ボールなどを準備しましたか?
- 家族とトイレの備えについて話し合いましたか?
- □ 誰が何を準備・管理するか決めましたか?
- □ 備蓄品の場所を共有しましたか?
- 自治体の情報を確認しましたか?
- □ 災害時の仮設トイレの設置場所や、福祉避難所について確認しましたか?
まとめ
災害時のトイレ問題は、事前の備えで不安を大きく減らすことができます。簡易トイレや必要な衛生用品を準備しておくだけで、いざという時の安心感が変わってきます。
すぐに全ての準備を揃えるのが難しければ、まずは携帯トイレとウェットティッシュからでも始めてみましょう。一つずつ準備を進めることが大切です。
もし、どのようなものを準備すれば良いか分からない、どこに相談すれば良いか不安だ、といったことがありましたら、お住まいの自治体の窓口や地域包括支援センターに相談してみてください。専門家から適切なアドバイスを受けることができます。
ご自身と大切なご家族のために、災害時のトイレの備えを今一度確認してみてください。