高齢者のための災害時避難:安全な避難のタイミングと移動方法
災害はいつ起こるか分かりません。特に高齢者の皆様や、介護が必要なご家族がいらっしゃる場合、いざという時の避難について「どうしたら良いのだろう」とご心配になることもあるかもしれません。避難と聞くと、避難所へ移動することを思い浮かべる方が多いかもしれませんが、実は避難にはいくつかの方法があります。
この記事では、高齢者の皆様やそのご家族が、いざという時に落ち着いて安全に避難できるよう、特に大切となる「避難を始めるタイミング」と「避難場所への移動方法」について、具体的な情報をお伝えします。
災害発生!いつ避難を始めるべきか
「早めの避難」という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。これは高齢者の皆様にとって特に大切なことです。
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早めの避難が大切な理由
- 体力的な負担が少ない明るい時間帯に移動できる可能性が高まります。
- 道路の混雑や冠水、土砂崩れといった危険な状況を避けられる可能性が高まります。
- 自治体からの情報が入りやすく、落ち着いて行動できます。
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自治体からの避難情報に注意する テレビやラジオ、自治体からの広報などを通じて発表される避難情報には、レベル分けがされています。
- 警戒レベル3「高齢者等避難」:避難に時間を要する高齢者や障害のある方、小さなお子さんがいるご家庭などは、危険な場所から避難しましょう。これは、危険な場所にいる全ての方が避難を始めるきっかけとなる情報です。
- 警戒レベル4「避難指示」:この情報が出されたら、対象地域の全ての方はすぐに安全な場所へ避難してください。
これらの情報が出されたら、「もう少し様子を見よう」ではなく、「そろそろ避難を考え始める、あるいはすぐに行動するタイミングだ」と判断することが重要です。特に、「高齢者等避難」の情報が出た時点で、避難の準備を整え、必要であれば避難を開始することが、安全確保のために大変有効です。
- 「垂直避難」という選択肢 お住まいの建物が丈夫で、浸水する高さよりも上の階が安全な場合は、自宅の上の階へ移動する「垂直避難」も有効な避難方法の一つです。ただし、建物の安全性や、その後のライフライン停止の可能性などを考慮する必要があります。事前に自治体のハザードマップで自宅のリスクを確認しておきましょう。
どうやって安全に避難場所へ移動するか
避難する場所を決めたら、次に考えるべきは移動手段です。高齢者の体力や健康状態、移動経路の安全性を考慮して、無理のない方法を選びましょう。
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事前に決めておくこと
- 避難場所: 自宅近くの指定避難所や福祉避難所、安全な親戚・知人宅などを、複数検討しておきましょう。福祉避難所は開設に時間がかかる場合があるため、まずは近くの指定避難所への避難を考えるのが一般的です。
- 避難経路: 避難場所までの安全な経路を事前に確認しておきましょう。危険箇所(川沿い、崖、狭い道など)を避け、夜間でも分かりやすい道を選びます。複数の経路を知っておくと安心です。
- 集合場所・連絡方法: 家族と離れてしまう可能性も考えて、災害時の集合場所や安否確認の方法を決めておきましょう。
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移動手段の検討 体力や状況に応じて、様々な移動手段が考えられます。
- 徒歩: 体力があり、安全な経路が確保できる場合は徒歩も選択肢です。ただし、無理は禁物です。
- 家族や近隣の方の車: 自家用車や近隣の方の車に乗せてもらうことも考えられます。ただし、道路状況が悪化する可能性があるため、早めの判断が必要です。
- 自治体による支援: 避難行動要支援者名簿に登録している方や、自力での避難が困難な方のために、自治体が避難を支援する場合があります。事前に担当窓口に相談し、どのような支援が受けられるか確認しておくことが大切です。
- 福祉車両・移送サービス: 介護サービスを利用している方は、事業者に相談してみるのも良いでしょう。
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避難時の服装と持ち物 動きやすく、体温調整しやすい服装を選びましょう。靴は底が厚く、履き慣れた運動靴などが安全です。両手が使えるように、荷物はリュックサックに入れるのがおすすめです。事前に準備しておいた非常用持ち出し袋は、すぐに持ち出せる場所に置いておきましょう。特に、持病の薬や常備薬、お薬手帳、介護用品、補聴器の予備電池、眼鏡などは必ず持ち出してください。
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移動中の注意点
- 体調がすぐれない場合は、無理せず安全な場所で休憩を取りましょう。
- 水分補給をこまめに行いましょう。
- 暗い時間帯や視界が悪い場合は、特に足元に注意し、懐中電灯などを活用しましょう。
- 一人での移動が不安な場合は、家族や近所の方と一緒に避難することを検討しましょう。
誰と避難する? 家族や地域との連携
一人で全てを抱え込まず、周りの人たちと協力することが安全な避難につながります。
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家族との話し合い 日頃から、災害が起きたらどうするか、どこへ避難するか、連絡方法は、といったことを家族で具体的に話し合っておきましょう。定期的に話し合うことで、いざという時も冷静に対応できます。
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近所の方との助け合い 日頃から地域の方と交流を持ち、いざという時に助け合える関係を作っておくことも大切です。安否確認や避難の際の声かけ、移動のサポートなど、地域の支え合いは大きな力になります。
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自治体の避難支援 自力での避難が難しい高齢者や障害のある方のために、「避難行動要支援者名簿」制度があります。名簿に登録することで、災害発生時に自治体や地域の支援者による安否確認や避難支援を受けやすくなります。お住まいの自治体の窓口に相談してみてください。
最後に:計画と相談で安心を
災害時の避難のタイミングや移動方法について、具体的なイメージを持てたでしょうか。大切なのは、「いつ、どうやって」避難するかを事前に考え、準備しておくことです。
一度立てた避難計画も、時間と共に状況が変わる可能性があります。定期的に見直し、必要であれば修正しましょう。
もし、避難計画について不安なことや分からないことがあれば、お住まいの自治体の防災担当窓口や、地域包括支援センターなどに相談してみてください。専門家や地域の方が、あなたやご家族の状況に合わせたアドバイスをしてくれるはずです。
この情報が、皆様の安心につながる一助となれば幸いです。