高齢者のための災害時 食料と水分:持病・体調に合わせた備え方の具体例
災害はいつ起こるかわかりません。いざという時、避難生活や自宅での待機が長引くことも考えられます。特に高齢者の方にとって、体力維持や持病の管理のためにも、普段の生活に近い食事や十分な水分補給は非常に重要です。
「どんなものを備蓄すればいいの」「持病があるけど大丈夫かな」「準備が難しそう」といった不安をお持ちかもしれません。この記事では、高齢者の方やご家族が安心して災害時を乗り切れるよう、食料と水分の具体的な備え方について、わかりやすくご説明します。
なぜ高齢者にとって食料と水分の備えが大切なのでしょうか
災害時は、物流の停止やインフラの寸断により、普段のように食料品や飲み物を手に入れることが難しくなります。特に、高齢者の方々には以下のような理由から、事前の備蓄が特に重要となります。
- 体力維持のため: バランスの取れた食事は、体力を維持し、病気にかかりにくくするために不可欠です。
- 持病の管理のため: 規則正しい食事や、塩分・糖分などに配慮した食事は、持病の悪化を防ぐ上で大切です。
- 脱水症状の予防: 高齢者は体の水分量が少なく、のどの渇きを感じにくくなるため、意識的な水分補給が必要です。
- 心の安心のため: 食べ慣れたものや、おいしいと感じるものは、不安な状況での心の支えになります。
災害に備える基本的な備蓄の考え方
まず、どのくらいの期間の備蓄が必要かを知っておきましょう。国や自治体では、最低でも3日分、できれば1週間分の食料と水分の備蓄を推奨しています。
- 備蓄量の目安: 1人あたり1日3リットルの飲料水、3食分の食料が目安です。家族構成に合わせて必要な量を計算してみてください。
- 備蓄場所: 一か所にまとめておくのではなく、避難時にすぐに持ち出せる場所(非常用持ち出し袋の中)と、自宅で待機する場合に備えて分散して保管することが望ましいです。
高齢者や持病がある方向け:備蓄選びのポイント
ただ保存がきくだけでなく、高齢者の方や持病のある方にとって「食べやすい」「体に負担が少ない」ものを選ぶことが大切です。
1. 食べやすさ(嚥下能力への配慮)
- 柔らかいもの: おかゆ、うどん、スープ、煮込み料理のレトルトパウチ。
- ゼリー状のもの: 栄養補助ゼリー、ゼリー飲料。水分補給や栄養補給に役立ちます。
- パン: 缶詰入りのパンなどは長期保存が可能です。
2. 栄養バランス
- 炭水化物、タンパク質、ビタミンなどがバランス良く摂れると理想的です。
- 魚や肉の缶詰、豆類の缶詰、野菜ジュース、フルーツ缶詰なども備蓄しておくと良いでしょう。
- 栄養補助食品やバランス栄養食も、手軽に栄養補給できるためおすすめです。
3. 持病への配慮
- 糖尿病の方: 糖分の多いもの、炭水化物に偏りすぎた食事は避ける必要があります。成分表示を確認し、かかりつけ医や栄養士に相談しながら選びましょう。糖質控えめのレトルト食品などもあります。
- 腎臓病の方: 塩分やカリウムの制限が必要な場合があります。減塩タイプのレトルト食品や、加工されていない食品(乾麺など)を検討します。こちらも事前に医師に相談してください。
- アレルギーのある方: 食品表示をよく確認し、アレルギーの原因物質が含まれていないかを徹底的にチェックします。
4. 保存性・開封のしやすさ
- 常温で長期保存できるもの: 缶詰、レトルトパウチ、フリーズドライ食品などが適しています。
- 開封・調理のしやすさ: 缶切り不要のプルトップ缶や、湯煎や電子レンジ(電気が使える場合)で簡単に温められるレトルト食品が便利です。カセットコンロと予備のガスボンベもあると、温かい食事ができます。
5. 食べ慣れたもの・好みのもの
- 全く知らないものより、日頃から食べ慣れているものの方が、災害時のストレスを和らげ、食欲を保つことにつながります。
備蓄しておくと便利な食品例
- 水(ミネラルウォーター)
- 缶詰(魚、肉、野菜、果物)
- レトルト食品(おかゆ、ごはん、カレー、煮物、丼ものの具など)
- フリーズドライ食品(みそ汁、スープ、雑炊など)
- 乾麺(うどん、そば、パスタ)
- パックご飯
- 乾物(ひじき、わかめ、切り干し大根など)
- ビスケット、クラッカー、チョコレート
- 栄養補助食品、カロリーメイトなど
- 野菜ジュース、フルーツジュース
- 経口補水液やスポーツドリンク(持病に注意)
- 缶詰入りパン
水分の備蓄について
食料と同様に、水分も非常に重要です。脱水症状は命に関わることもあります。
- 必要な量: 1人1日3リットルを目安に、最低3日分を確保します。ペットボトル入りのミネラルウォーターが一般的です。
- 種類: ミネラルウォーターの他に、体調が悪く食事が摂れない場合や、下痢・嘔吐がある場合には、経口補水液が有効です。スポーツドリンクも水分・糖分・塩分を補給できますが、持病がある方は医師に相談してから使用してください。
- 備蓄品の管理: 水も賞味期限がありますので、定期的に確認し、入れ替えましょう。
食事関連で一緒に備えておきたいもの
- カセットコンロ、予備のガスボンベ
- 鍋、やかん
- 使い捨ての皿、コップ、割り箸、スプーン、フォーク
- ラップ、アルミホイル(食器に敷けば洗う手間が省けます)
- ウェットティッシュ、キッチンペーパー
- 缶切り、栓抜き
- 携帯用トイレ(水分摂取量が増えるとトイレの回数も増えるため)
備蓄品の管理と「ローリングストック」
せっかく備蓄しても、賞味期限が切れてしまっては意味がありません。定期的に(半年に一度など)賞味期限を確認し、切れる前に普段の食事で使い、使った分だけ新しく買い足していく方法を「ローリングストック」といいます。無理なく備蓄を続けられるおすすめの方法です。
避難所での食事について
避難所では、多くの方に食事を提供するため、個別のニーズ(アレルギー、持病、食べやすさなど)に十分に対応できない場合があります。
- 避難所に到着したら、必ず受付でアレルギーや持病について伝えてください。
- 可能であれば、ご自身やご家族が必要とする数日分の備蓄品(特に持病に対応したものや食べやすいもの)を持参することをおすすめします。
- 地域の福祉避難所が開設される場合は、高齢者や障がいのある方への配慮がより行き届いている場合があります。自治体の情報を確認しましょう。
まとめ:小さな一歩から始めましょう
災害時の食料と水分の備えは、高齢者の方々が安心して過ごすために欠かせません。持病や体調に合わせた備蓄品を選ぶこと、そして定期的に点検し入れ替えることが大切です。
まずは3日分からでも構いません。普段の買い物の中で、少しずつ「もしも」のための食品や飲み物を加えてみてください。この記事でご紹介したポイントや食品例を参考に、ご自身やご家族に合った備えを進めていきましょう。
何から始めて良いか分からない場合は、お住まいの自治体の窓口や、地域の社会福祉協議会などに相談してみるのも良い方法です。一人で抱え込まず、周りの助けも借りながら、着実に準備を進めていきましょう。具体的な備蓄リストを作ってみることから始めてはいかがでしょうか。