高齢者のための災害時情報収集・連絡の備え方:途切れない安心のために
はじめに:もしもの時、情報は命綱
大きな災害が起きた時、「今、何が起きているのか」「安全な場所はどこか」「家族は無事だろうか」といった情報を得ること、そして大切な家族と連絡を取ることは、命を守り、安心を保つ上で非常に重要です。
特に、ご高齢の方にとっては、普段から使い慣れていない方法で情報収集をしたり、混乱した状況で連絡を取ったりすることに不安を感じることもあるかもしれません。また、災害によって停電したり、通信がつながりにくくなったりすると、頼りにしていた情報源や連絡手段が使えなくなる可能性もあります。
このガイドでは、高齢者ご本人やご家族が、災害時でも途切れることなく必要な情報を得て、大切な人と連絡を取り合えるように、具体的にどのような準備をしておけば良いのかを分かりやすくお伝えします。
災害時の情報収集:どこから、どうやって?
災害が発生した時、刻一刻と状況が変化します。正確な情報を速やかに入手することが、安全な避難やその後の行動を決める上で欠かせません。高齢者の方が利用しやすい情報源と、その備えについて確認しましょう。
1. テレビとラジオ
多くの方が普段から利用されているテレビやラジオは、災害時にも重要な情報源となります。
- テレビ: 停電すると見られなくなるため、非常用の電源(ポータブル電源など)や、バッテリー内蔵のテレビがあると安心です。
- ラジオ: 停電時でも電池で動くため、災害時の基本の情報源です。
- 備えのポイント:
- 携帯ラジオの準備: 手のひらサイズの小さなものでも構いません。AM/FMの両方が聞けるものが良いでしょう。
- 予備の電池: ラジオの種類に合った電池を多めに備蓄します。
- 手回し充電ラジオ: 電池がなくても使える手回し充電式のラジオは非常に役立ちます。スマートフォンの充電ができるタイプもあります。
- 普段から聞く練習: 普段からラジオを聞く習慣をつけておくと、いざという時に慌てずに済みます。
- 備えのポイント:
2. 自治体からの情報
お住まいの市区町村は、災害対策本部を設置し、避難指示や避難所の開設状況など、地域に密着した重要な情報を発信します。
- 防災無線: 地域に設置されたスピーカーから情報が流れます。風雨が強いと聞き取りにくい場合があります。
- 広報誌や回覧板: 災害発生「前」の備えの情報などが掲載されています。
- 自治体のウェブサイト・SNS: インターネットが使える環境であれば、最新の情報が確認できます。ご家族の方が確認し、高齢のご家族に伝える方法も考えておきましょう。
- 広報車: 地域内を巡回して呼びかけを行います。
- 備えのポイント:
- 自治体の情報伝達手段を確認: 普段からお住まいの自治体がどのような方法で情報を発信しているかを知っておきましょう。
- 地域の情報を得る人を決めておく: ご家族やご近所の方など、誰が自治体からの情報を確認し、高齢のご家族に伝えるかを事前に話し合っておくとスムーズです。
3. 家族や近所からの情報
離れて暮らす家族からの連絡や、近所の方からの声かけも貴重な情報源です。
- 備えのポイント:
- 家族との情報共有ルール: 災害時にどこから情報を得るか、どのように共有するかを事前に話し合っておきます。
- ご近所との声かけ: 普段から挨拶や声かけを行い、いざという時に助け合える関係を作っておくことが大切です。
災害時の連絡手段:どうやって安否確認?
災害時は、電話回線が混み合ったり、基地局が被災したりして、電話がつながりにくくなることがあります。複数の連絡手段を準備しておくことが重要です。
1. 電話(固定電話・携帯電話)
- 固定電話: 停電すると使えないことが多いですが、一部のタイプや通信方式では使える場合もあります。
- 携帯電話: 災害時はつながりにくくなることがあります。充電が切れると使えなくなります。
- 備えのポイント:
- 家族の連絡先リスト: 携帯電話が壊れたり、充電が切れたりした場合に備え、家族や親戚の電話番号、災害時の集合場所などを書いた紙を、いつも持ち歩くものとは別の場所にも控えておきましょう。
- 充電器・モバイルバッテリー: 携帯電話の充電がいつでもできるように準備しておきます。手回し充電器やソーラー充電器も有効です。
- 公衆電話の場所確認: 災害時には公衆電話が優先的に復旧することがあります。お近くの公衆電話の場所を確認しておきましょう。
2. 災害伝言サービス
災害時に電話がつながりにくい状況でも、安否情報を確認・登録できるサービスです。
- 災害伝言ダイヤル(171): 音声で伝言を録音・再生できます。
- 災害用伝言板(web171): インターネット上で文字の伝言を登録・確認できます。
- 備えのポイント:
- 使い方を知っておく: 災害が発生する前に、家族みんなで使い方を練習しておきましょう。体験利用できる期間もあります。
- 安否確認のルールを決めておく: 「無事だったらまず171にメッセージを入れる」など、家族間で安否確認の方法やルールを決めておくと安心です。
3. その他の連絡手段
- SNS(LINE、Twitterなど): インターネット環境があれば利用できます。安否確認機能がある場合もあります。
- メール: 電話回線よりもつながりやすい場合があります。
- 備えのポイント:
- 無理のない範囲で活用: 高齢者ご本人が使い慣れていなくても、離れて暮らす家族が情報収集や連絡手段として活用できます。
高齢者のための「情報・連絡」備えチェックリスト
ご自身やご家族のために、以下の項目について確認・準備を進めてみましょう。
- 情報収集の備え
- [ ] 携帯ラジオ(予備の電池または手回し充電式)を準備した
- [ ] 自治体からの情報伝達手段(防災無線、広報車など)を確認した
- [ ] 家族やご近所と、災害時の情報共有方法について話し合った
- 連絡手段の備え
- [ ] 家族や親戚の連絡先リストを作成し、すぐに取り出せる場所に保管した
- [ ] 携帯電話の充電器、モバイルバッテリー、手回し充電器などを準備した
- [ ] 災害伝言ダイヤル(171)の使い方を家族で確認した
- [ ] 災害時の安否確認の方法(誰にどう連絡するか、どこで落ち合うかなど)を家族で話し合った
- [ ] お近くの公衆電話の場所を確認した
- 普段からの準備
- [ ] 普段からラジオを聞く習慣をつけた
- [ ] ご近所の方と挨拶や声かけをするように心がけている
どこに相談すれば良いか
災害時の情報収集や連絡の備えについて、さらに詳しく知りたい場合や、個別の状況に応じた相談をしたい場合は、以下の窓口に問い合わせてみましょう。
- お住まいの市区町村の防災担当課: 地域の災害情報伝達方法や、避難に関する全般的な相談ができます。
- 地域の社会福祉協議会: 高齢者や体の不自由な方の避難に関する相談や、地域の支え合い活動について情報が得られます。
- 地域包括支援センター: 高齢者の暮らし全般に関する相談を受け付けており、防災に関する情報提供や関連機関への連携も行っています。
まとめ:備えは安心につながります
災害時に必要な情報を得たり、大切な家族と連絡を取ったりするための備えは、もしもの時の「安心」につながります。一度に全てを準備するのは大変かもしれません。まずはラジオと予備の電池を用意することから始めるなど、できることから少しずつ、無理のない範囲で準備を進めてみてください。
そして、この機会にご家族やご近所の方と、災害時の情報収集や連絡について話し合ってみることをお勧めします。皆で助け合い、情報を共有することが、災害を乗り越える大きな力となります。
この情報が、皆様の災害への備えの一助となれば幸いです。