高齢者のための避難計画:家族と確認する具体的な準備と見直し
避難計画は「立てて終わり」ではありません:準備と見直しが安心につながります
日頃から災害への備えについて考え、避難計画を立てることは、万が一の際に落ち着いて行動するために非常に重要です。高齢者の皆様やそのご家族にとって、「マイ避難計画」の作成は大きな一歩となるでしょう。しかし、計画は一度立てたら終わりではありません。計画を実行可能なものにするための「具体的な準備」と、常に最新の状態に保つための「見直し」が、安心した避難生活を送るためには欠かせないのです。
このガイドでは、立てた避難計画をどのように確認し、具体的な準備を進めるか、そして定期的な見直しの重要性について、分かりやすくご説明します。ご家族と一緒に一つずつ確認しながら進めていきましょう。
家族と一緒に避難計画を「確認」しましょう
避難計画は、ご本人だけでなく、一緒に暮らす家族や離れて暮らす家族とも共有し、確認することが大切です。
- 計画内容の再確認: 避難場所はどこか、家族とはどこで合流するか、連絡方法はどのようにするかなど、計画の基本的な内容を家族全員で声に出して確認してみましょう。全員が同じ情報を共有していることが重要です。
- 役割分担の明確化: 災害が発生したとき、誰が何をするのか具体的に決めましょう。例えば、「お父さんは窓の鍵を確認する」「お母さんは持ち出し袋を玄関に運ぶ」「子どもはペットをケージに入れる」などです。高齢のご本人の体力や状況に合わせて、無理のない役割を決めます。
- 避難経路のシミュレーション: 実際に自宅から避難場所までの経路を家族と一緒に歩いて確認してみましょう。途中に危険な場所はないか、坂道や階段は避けられるかなどを確認します。夜間や悪天候を想定したルートも考えておくと良いでしょう。
具体的な「準備」を進めるステップ
計画を確認したら、次はその計画に基づいた具体的な準備を進めましょう。
- 持ち出し品・備蓄品の準備:
- 場所の決定: 持ち出し袋はいつでも持ち出せる場所に置きましょう。備蓄品は分散して保管すると良いでしょう。
- 内容の確認と補充: 計画にリストアップしたものが全て揃っているか確認し、不足しているものは買い足します。
- 期限のチェック: 食品や飲料水、常備薬などの使用期限や消費期限を確認します。切れているものは新しいものと交換しましょう。
- 持病薬・介護用品: 少なくとも1週間分(可能であれば2週間分)の常備薬、お薬手帳のコピー、かかりつけ医の連絡先を必ず持ち出し袋に入れます。介護用品(おむつ、ウェットティッシュ、清拭剤など)も忘れずに準備します。処方箋が必要な薬については、災害時の入手方法についてかかりつけ医や薬剤師に相談しておくと安心です。
- 自宅の安全対策の再確認: 家具の転倒防止対策、窓ガラスの飛散防止対策など、自宅で安全に過ごすための対策をもう一度確認します。必要に応じて専門業者に相談することも検討しましょう。
- 情報収集手段の確保: テレビだけでなく、電池式のラジオやスマートフォンのアプリ、自治体のホームページなど、複数の方法で情報が得られるようにしておきましょう。充電器や予備の電池も忘れずに準備します。
- 福祉サービスや地域との連携: 普段利用している福祉サービスや地域の支援団体がある場合、災害時の対応について事前に確認しておきましょう。避難する際に支援が必要な場合は、自治体の福祉担当窓口や地域の民生委員に相談しておくと、いざというときに連携がスムーズになります。
- 金銭的な備え: 災害時は停電などでキャッシュレス決済が利用できない場合があります。少額でも現金を準備しておくと安心です。預貯金通帳や印鑑、年金手帳などの貴重品も、持ち出しやすい場所にまとめておきましょう。
避難計画は「見直し」が大切です
計画は一度立てて準備をしても、状況は常に変化します。定期的な見直しは、計画が陳腐化しないために非常に重要です。
- なぜ見直しが必要か:
- 体調や状況の変化: ご自身の体調や、介護が必要なご家族の状況は変わることがあります。それに合わせて必要な持ち物や避難方法を見直す必要があります。
- 家族構成の変化: 家族が増えたり、一緒に住む人が変わったりした場合、役割分担や連絡方法を見直す必要があります。
- 地域の状況変化: 避難所の場所が変わる、新しい避難経路ができるなど、地域の防災情報が更新されることがあります。
- 備蓄品の期限: 食品や電池、常備薬などには使用期限があります。期限切れのものを入れっぱなしにしないよう、定期的に確認が必要です。
- どのくらいの頻度で見直すか: 年に一度、あるいは季節が変わるごとに見直すのがおすすめです。防災週間など、行政が啓発活動を行う時期に合わせて見直すのも良いでしょう。
- 見直しのチェックポイント: 以下の点を中心に、計画と準備状況を確認しましょう。
- 避難場所・避難経路は適切か
- 家族の連絡方法に変わりはないか
- 持ち出し袋・備蓄品の中身は十分か、期限は切れていないか
- 持病薬や介護用品は足りているか
- 自宅の安全対策はできているか
- 現在の体調や必要な支援に合わせて計画を修正する必要はないか
- 家族とのコミュニケーション: 見直しは、家族が災害について話し合う良い機会です。準備の状況を共有し、お互いの不安を解消しながら進めましょう。
まとめ:小さな一歩から、継続的な備えへ
避難計画を立てるだけでなく、家族と一緒に確認し、具体的な準備を進め、定期的に見直すこと。このサイクルを続けることが、災害への不安を減らし、いざというときの落ち着いた行動につながります。
一度に全てを完璧にやろうと思わず、まずは一つずつ、できることから始めてみましょう。持ち出し袋の中身を一つ確認する、家族と避難場所までの道のりを話し合ってみるなど、小さな一歩から始めることが大切です。
もし、計画や準備について分からないこと、不安なことがあれば、お住まいの市区町村の防災担当窓口や社会福祉協議会などに相談してみるのも良いでしょう。一人で抱え込まず、周りのサポートも活用しながら、あんしんできる災害への備えを進めていきましょう。