災害発生、高齢者の避難はいつ、どこへ?:家族と一緒に考える判断のポイント
災害発生、その時どうする?避難の判断に迷わないために
地震や台風など、いつ起きるかわからない災害。もしもの時、「避難が必要か?」「いつ、どこへ行けば安全なのか?」と迷ってしまうこともあるかもしれません。特に高齢の方や、持病、体の状態に不安がある場合、避難の判断はより難しく感じられることがあります。
このガイドでは、災害が発生した際に、高齢者ご自身やそのご家族が、慌てずに安全な避難行動をとるための判断のポイントや、日頃から準備しておきたいことについて、分かりやすくお伝えします。
災害情報の確認:どこから情報を得るか
災害が発生した時、まず大切なのは、今何が起きているのか、自分のいる場所は安全なのかという正確な情報を集めることです。インターネットだけでなく、次のような情報源も活用できます。
- テレビ、ラジオ: 災害時には、NHKや民放各局が緊急の災害情報を放送します。特にラジオは停電時でも電池があれば使えるため、非常に有効な情報源です。自治体からの避難情報なども放送されることがあります。
- 自治体の広報・防災無線: お住まいの市町村からの広報誌や、屋外の防災無線からも、避難に関する情報が流されます。聞き慣れないかもしれませんが、注意して聞くように心がけましょう。
- 電話: 災害伝言ダイヤル(171)や、家族・親戚、お住まいの地域の関係機関などに電話で安否確認や情報交換をすることも考えられます(ただし、災害時は電話がつながりにくいことがあります)。
- 地域の助け合い: ご近所の方との声かけや、自主防災組織など、地域での情報交換も重要です。
大切なのは、一つの情報源に頼らず、複数の方法で情報を集め、自治体など公的な機関からの情報であるかを確認することです。
避難が必要かどうかの判断ポイント
集めた情報や、ご自身の状況を踏まえて、避難が必要かどうかを判断します。次のような点を家族や周囲の人と一緒に確認してみましょう。
1. ハザードマップで危険度を確認する
お住まいの地域に、土砂崩れや洪水の危険があるか、事前に自治体のハザードマップで確認しておくことが重要です。災害が発生し、大雨が続いている場合や、川の水位が上がっている場合など、ハザードマップで危険とされている場所にいる場合は、早めの避難を検討します。
- お住まいの市町村役場などでハザードマップを入手したり、見方について質問したりできます。
2. 自宅の安全を確認する
- 自宅にいることが安全か、建物の状況や周囲の様子を確認します。
- 窓ガラスが割れたり、壁にひびが入ったりしていないか。
- 家の中に危険な場所はないか(家具の転倒など)。
- もし自宅が安全であれば、一時的に在宅避難を選択することも考えられます。ただし、ライフラインが停止したり、災害が長期化したりする場合に備え、食料や水、携帯トイレなどの備蓄が必要です。
3. ご自身の体調や体の状態を考慮する
- 避難経路の安全が確保されているか、移動にどのくらいの時間がかかるかを考え、ご自身の体力で避難場所までたどり着けるか判断します。
- 持病がある場合は、体調の変化に注意が必要です。避難経路の途中で体調が悪くなる可能性も考慮します。
- 付き添いや介助が必要な場合は、誰と一緒に避難するか、どのような介助が必要かを確認します。
4. 時間に余裕をもって判断する
避難は、危険が迫ってから行うのではなく、時間に余裕をもって行うことが大切です。「警戒レベル3:高齢者等避難」が発令されたら、避難に時間がかかる高齢者や、避難によってかえって命に危険が及ぶ可能性が高い場所にいる方は、すぐに避難を開始することが推奨されています。
- 危険を感じたり、自治体から避難に関する情報(避難準備・高齢者等避難開始、避難勧告、避難指示など)が出たら、早めに判断しましょう。
- 夜間や悪天候時の避難は危険が伴います。できるだけ明るいうち、雨風が強くなる前に避難することが望ましいです。
どこへ避難するか:複数の選択肢を知っておく
避難先は、指定された避難所だけではありません。ご自身の状況や地域の危険度に応じて、いくつかの選択肢を事前に家族と話し合っておくことが大切です。
- 指定緊急避難場所: 災害発生時に緊急的に身の安全を確保するための場所です。小中学校の校庭など、広域避難場所として指定されている場所があります。
- 指定避難所: 災害によって自宅へ戻れなくなった人が一定期間滞在する場所です。小中学校の体育館などが指定されています。生活環境が必ずしも快適でない場合や、多くの人が集まることへの不安もあるかもしれません。
- 福祉避難所: 高齢者や障害のある方、妊産婦など、特別な配慮が必要な方を受け入れる避難所です。一般の避難所よりも設備が整っていたり、専門的な支援を受けられたりする場合があります。ただし、開設は一般避難所よりも遅れることがあります。受け入れには基準がありますので、事前に自治体に確認しておきましょう。
- 安全な親戚・知人宅: 災害の影響を受けにくい安全な場所に住む親戚や知人宅に避難することも有効な選択肢です。事前に受け入れが可能か相談しておきましょう。
- その他の安全な場所: 高層階のマンションに住んでいる場合など、自宅が安全な場所であれば、自宅内にとどまる「在宅避難」も選択肢の一つです。ただし、ライフライン停止への備えが必要です。
避難先は一つに決めつけず、災害の種類や状況によって柔軟に判断できるよう、日頃からいくつかの候補を家族と一緒に検討しておくことが重要です。
避難を決めたら:安全に行動するために
避難することを決めたら、落ち着いて行動します。
- 安全な服装に着替える: 動きやすく、肌の露出が少ない長袖・長ズボンを選びます。靴は底が厚く、歩きやすいものを履きましょう。
- 火の始末、ガスの元栓を閉める: 家を出る前に、火の元やガスの元栓を必ず確認します。
- 電気のブレーカーを切る: 通電火災を防ぐため、可能な場合はブレーカーを切ります。
- 戸締りをする: 防犯のため、可能な範囲で戸締りをします。
- 「逃げ遅れゼロ」を目指す声かけ: 可能であれば、近所の方に声をかけ合ったり、地域の避難について情報交換したりします。特に、一人暮らしの高齢者など、手助けが必要な方がいないか、日頃から気にかけておくことが大切です。
- 持ち出し袋を持って、安全な経路で避難場所へ向かう: 事前に確認しておいた、土砂崩れや浸水の危険がない安全な避難経路を選び、焦らず移動します。
避難判断チェックリスト(例)
災害が発生した時に、家族と一緒に確認するためのチェックリストを日頃から用意しておくと役立ちます。
- テレビ・ラジオ・自治体からの情報は確認しましたか?
- お住まいの地域の警戒レベルは? 避難情報は出ていますか?
- ハザードマップで危険な区域に入っていますか?
- 自宅は安全ですか?(建物の状態、周囲の状況)
- ご自身の体調や、一緒に避難する家族の体調は問題ありませんか?
- 避難場所までの経路は安全ですか? 移動時間はどのくらいかかりますか?
- 避難するために時間に余裕はありますか?(明るいうち、雨風が強くなる前か)
- どこへ避難するか(指定避難所、福祉避難所、親戚宅など)は決まっていますか?
- 避難する際に必要なもの(持ち出し袋、薬、貴重品など)は準備できていますか?
- 近所の方や家族と連絡は取れましたか?
これらの項目を事前に家族と話し合い、確認しておくことで、いざという時の判断がスムーズになります。
まとめ:日頃からの準備と家族との話し合いが大切
災害時の避難は、命を守るための大切な行動です。避難するかどうかの判断、そして安全な避難のためには、日頃からの準備と、家族や地域との話し合いが何よりも重要になります。
お住まいの地域のハザードマップを確認する、避難場所までの経路を歩いてみる、持ち出し袋を準備する、そして何よりも、家族と「もしもの時はどうするか」を具体的に話し合ってみてください。これらの小さな一歩が、大きな安心につながります。
もし、避難計画や準備について分からないこと、不安なことがあれば、お住まいの市町村の窓口や、地域の民生委員、社会福祉協議会などに相談することもできます。一人で抱え込まず、周囲のサポートも得ながら、着実に備えを進めていきましょう。