高齢者のための災害後自宅再建ガイド:安全確認から片付け、公的支援まで
災害からご自宅へ無事にお帰りになった皆さま、まずは本当にお疲れ様でした。ほっと一息つく一方で、被災したご自宅を見て、これからどうすれば良いのか、片付けや修理、生活再建について不安を感じていらっしゃるかもしれません。
このガイドでは、高齢者の方やそのご家族が、被災したご自宅での生活を再建するために必要なことについて、安全確認から片付け、そして受けられる可能性のある公的な支援まで、順を追ってご説明します。
災害から自宅へ戻る前に確認すること
安全が確認されるまで、決して急いで自宅に戻らないでください。二次的な災害に巻き込まれる危険があります。
- 自治体からの情報収集: ご自宅のある地域について、自治体から避難指示が解除されたか、建物の安全確認が行われているかなどの情報をテレビ、ラジオ、広報誌、インターネットなどで確認しましょう。
- 建物の安全確認: 大きな被害を受けた地域では、自治体などが専門家による建物の安全確認を行っている場合があります。安全確認済みの「判定ステッカー」が貼られているか確認することも一つの目安になります。赤や黄色のステッカーが貼られている場合は、立ち入りが制限されている可能性がありますので、指示に従ってください。
自宅に帰宅した後の安全確認
自宅に戻られたら、まずは安全を確認することが最も重要です。ご自身の安全を確保しながら、落ち着いて状況を確認しましょう。
建物の外観の確認
- 家の傾きや基礎に大きなひび割れがないか見てみましょう。
- 屋根瓦や外壁が崩れたり、剥がれたりしていないか確認しましょう。
- 窓ガラスが割れていないか、サッシが歪んでいないか確認しましょう。
- 門や塀が倒れていないか確認しましょう。
建物の内部の確認
- 床が傾いていないか、壁や天井に大きなひび割れや雨漏りがないか確認しましょう。
- 室内にガス臭い、油臭いなどの異臭がないか確認しましょう。
- 電線や配管が露出したり、破損したりしていないか確認しましょう。
- 家具が転倒したり、落ちてきたりする危険がないか確認しましょう。
【注意】 少しでも危険を感じたら、無理に立ち入らないでください。専門家や信頼できる工務店に相談し、安全が確認されるまで待つことも必要です。
電気、ガス、水道の確認
- 電気: ブレーカーが落ちているか確認し、濡れていないか確認してからブレーカーを上げましょう。配線が破損している場合は危険ですので、電力会社に連絡してください。
- ガス: ガス臭い場合は、火を使わずに窓を開けて換気し、すぐにガス会社に連絡してください。ガス管が破損している場合も同様です。安全が確認されるまでガスの使用は控えましょう。
- 水道: 水道管が破損していないか確認し、濁った水が出てこないか確認しましょう。断水している場合は、自治体からの情報をご確認ください。
片付けを安全に進めるために
被災した自宅の片付けは、体力的に大きな負担がかかります。高齢者の方だけで無理に進めず、ご家族や地域のボランティア、専門業者などの協力を得ながら、安全に配慮して進めることが大切です。
片付けの準備と服装
- マスク、ゴーグル、厚手の手袋、長袖・長ズボン、丈夫な靴などを必ず着用しましょう。ホコリや有害物質、ガラス片などから身を守ります。
- tetanusトキソイドの予防接種を受けているか確認しておくと安心です。
片付けの進め方
- まずは、安全な場所を確保することから始めましょう。崩れそうなものを固定したり、危険な場所を避けたりします。
- 貴重品や思い出の品を優先的に探し、安全な場所に保管しましょう。
- 使えるものと使えないものを区別します。汚染されたり、壊れたりした食品や衣類などは処分が必要です。
- 大きな家具や重いものを移動させる際は、複数人で協力したり、専門業者に依頼したりすることを検討しましょう。
- 無理をせず、こまめに休憩を取りましょう。水分補給も忘れずに行ってください。
- 感染症予防のため、作業後は手洗いやうがいを丁寧に行いましょう。
利用できる公的な支援制度
災害で被災された方のために、国や自治体、社会福祉協議会などによる様々な支援制度があります。どのような支援があるのかを知り、積極的に活用しましょう。
被災証明書・罹災証明書
- 被災証明書: 災害によって被災したことを証明する書類です。災害見舞金や保険金請求などに利用できる場合があります。
- 罹災証明書: 建物の被害状況を証明する書類で、公的な支援制度の申請に多くの場合必要となります。必ず申請手続きを行いましょう。申請方法や期間については、お住まいの自治体にご確認ください。申請には時間がかかる場合がありますので、早めに手続きを始めることをお勧めします。
主な支援制度の例
- 災害弔慰金・災害障害見舞金: 災害により亡くなられた方のご遺族や、重い障害を負われた方に支給されます。
- 被災者生活再建支援制度: 自然災害により居住する住宅が全壊するなど、生活基盤に著しい被害を受けた世帯に対し、支援金が支給されます。
- 災害援護資金の貸付: 災害により被害を受けた世帯に対し、生活の立て直しのために資金の貸付が行われます。
- 住宅の応急修理制度: 一部損壊した住宅について、日常生活に必要最低限の修理を自治体が行う制度です。自己負担なしで上限額の範囲内で修理が可能です。
- 税金や公共料金の減免・猶予: 状況に応じて、税金や国民健康保険料、公共料金などの支払いが減免されたり、猶予されたりする場合があります。
これらの制度は、被害の程度や世帯の状況によって対象や支援内容が異なります。詳細は、自治体の窓口やウェブサイトで確認するか、相談してみましょう。
どこに相談すれば良いか
一人で悩まず、まずは相談してみてください。
- お住まいの市区町村の窓口: 罹災証明書の申請、公的な支援制度に関する情報提供、各種手続きの相談など、最初に相談すべき窓口です。福祉担当の部署でも高齢者向けの支援に関する情報を提供している場合があります。
- 社会福祉協議会: 被災された方への見舞金の支給(共同募金など)、ボランティアのあっ旋、生活福祉資金の貸付など、様々な支援を行っています。
- 弁護士会、司法書士会: 災害に関する法律相談(保険、借金、相続など)を行っている場合があります。
- 消費者ホットライン(188): 災害に便乗した悪質な商法などに関する相談に乗ってくれます。
ご家族やケアマネジャー、民生委員など、普段から関わりのある方にも相談してみることをお勧めします。
心身のケアも大切に
災害による経験は、心にも大きな負担となります。不安や疲れを感じるのは自然なことです。
- 無理をせず、休養をしっかりとるように心がけましょう。
- 食事や水分をきちんと摂りましょう。
- できる範囲で体を動かしたり、気分転換をしたりしましょう。
- 眠れない、食欲がない、気分が落ち込むなどが続く場合は、専門機関に相談することも考えてみてください。自治体や社会福祉協議会、精神保健福祉センターなどで相談窓口が案内されています。
まとめ
被災したご自宅の再建は、時間と労力がかかる大変な作業です。高齢者の方が全てを一人で抱え込む必要はありません。ご家族や地域の方々、行政や専門機関の支援を積極的に活用してください。
この記事でご紹介した情報が、皆さまの災害後の生活再建の一助となれば幸いです。落ち着いて、一つずつ、できることから進めていきましょう。そして、何よりもご自身の安全と健康を第一に考えてください。