高齢者のための災害時 在宅避難ガイド:もしもの備えと注意点
もしもの時、自宅で大丈夫?高齢者のための在宅避難準備ガイド
大きな災害が起きたとき、避難所へ行くことだけが唯一の避難方法ではありません。ご自宅の安全が確認できれば、住み慣れた自宅でそのまま生活を続ける「在宅避難」も大切な選択肢の一つです。特に、体力に自信がない方や、持病をお持ちの方、移動に不安がある方にとって、在宅避難は心身の負担を減らすことにつながる場合があります。
しかし、在宅避難を選ぶためには、事前の準備が欠かせません。電気やガス、水道などのライフラインが止まったり、必要なものが手に入りにくくなったりする可能性も考えられます。このガイドでは、高齢者の方やそのご家族が、もしもの時に自宅で安心して過ごすための準備と、在宅避難中の注意点について分かりやすくご説明します。
在宅避難とは?どんな時に考えられるか
在宅避難とは、災害が発生しても、自宅で安全に生活を続けることです。これは、主に以下のような状況で選択肢となります。
- ご自宅が災害による大きな被害を受けていない場合(家屋の倒壊や浸水がないなど、安全性が確保されている場合)
- 避難所が遠い、または移動が難しい場合
- 体調や持病、介護の必要などがあり、集団での避難所生活が難しい場合
もちろん、火災の危険がある場合や、自治体から避難指示(緊急)が出された場合など、命に危険が及ぶ状況では、すぐに指定された避難場所へ避難することが最も重要です。在宅避難は、あくまで「ご自宅が安全である」という前提の上で検討する選択肢です。
在宅避難のための具体的な準備
在宅避難を検討する場合、何よりも大切なのは「備え」です。普段の生活が難しくなることを想定して、必要なものをあらかじめ準備しておく必要があります。ご自身の状況やご家族と話し合いながら、一つずつ確認していきましょう。
1. 食料・飲料水の備蓄
ライフラインが止まっても、数日間は自宅で過ごせるだけの食料と飲み水を備蓄しておきましょう。目安は「最低3日分、可能であれば1週間分」と言われています。
- 飲料水: 1人1日3リットルを目安に用意します。ペットボトルなどで備蓄します。
- 食料:
- 乾パン、アルファ米、レトルト食品(ご飯、おかゆ、野菜スープなど)、缶詰(おかず、果物など)
- 高齢者向けの工夫:
- やわらかく、そのまま食べられるもの、または湯煎などで温めやすいものを選びます。
- 嚥下(えんげ)しやすいゼリー飲料や、栄養補助食品なども役立ちます。
- カセットコンロとボンベがあれば、温かい食事を作ることもできます。
- チョコレートやキャンディーなど、手軽にエネルギーを摂れるものも用意します。
2. 生活用品の備蓄
日常生活を送るために必要なものも忘れずに備蓄します。
- 簡易トイレ・凝固剤: 断水でトイレが使えなくなった場合に備えます。
- トイレットペーパー、ティッシュペーパー
- カセットコンロと予備のボンベ: 調理や湯沸かしに使えます。
- 電池、懐中電灯、携帯ラジオ: 停電時の情報収集や明かりとして不可欠です。スマートフォン用のモバイルバッテリーもあると良いでしょう。
- ウェットティッシュ、消毒液: 清潔を保つために使います。
- ゴミ袋: 簡易トイレを使う際や、ゴミをまとめるのに役立ちます。
- マッチ、ろうそく: 火の取り扱いには十分注意が必要です。
- 毛布、寝袋、カイロ: 寒さをしのぐためのものです。
3. 医療品の準備
持病がある方にとって、医療品の準備は特に重要です。
- 常備薬: 少なくとも数日分、可能であれば1週間分以上の常備薬を多めに処方してもらい、備蓄します。災害時は医療機関が機能しないことも想定されます。
- お薬手帳のコピー: 服用している薬の種類や量が分からなくならないように、手帳のコピーを保管しておきます。
- かかりつけ医、持病に関する情報: 連絡先や、アレルギー、過去の病歴などをまとめたメモを用意します。
- 救急用品: 絆創膏、包帯、ガーゼ、消毒液、体温計、常備薬以外の基本的な薬(痛み止め、胃薬など)をまとめておきます。
- 衛生用品: マスク、手指消毒液、入れ歯洗浄剤、おむつや尿とりパッドなど、ご自身の状況に合わせて必要なものを準備します。
4. 情報の入手方法の確保
災害時は正確な情報を得ることが大切です。
- テレビ: 停電時は使えなくなる可能性があります。
- ラジオ: 電池式の携帯ラジオは、停電時にも情報源として非常に有効です。自治体からの情報なども聞くことができます。
- 携帯電話・スマートフォン: 家族や安否確認の連絡に使えますが、電波状況やバッテリー切れに注意が必要です。モバイルバッテリーや手回し充電器を用意します。
- 地域の広報: 自治体のお知らせや、地域住民からの情報伝達なども重要な情報源になります。
5. 家の安全対策
在宅避難の前提として、自宅の安全を確認・確保しておく必要があります。
- 家具の固定や配置の見直し(転倒防止)
- 窓ガラスの飛散防止フィルムや対策
- 避難経路の確認(もしもの時に外へ出る場所やルート)
これらの自宅の安全対策については、地域の自治体などが情報提供を行っていますので、参考にしてください。
6. 連絡手段の確保
災害発生時、家族や親戚と連絡が取れるかどうかの確認は、大きな安心につながります。
- 事前に家族と連絡方法(電話、SNS、災害用伝言ダイヤルなど)や集合場所について話し合っておきます。
- 緊急連絡先リストを作成し、すぐに持ち出せる場所に置いておきます。
在宅避難中の注意点
在宅避難中は、普段とは異なる生活を強いられる可能性があります。体調を崩さないよう、以下の点に注意しましょう。
- 水分補給と食事: 喉が渇いていなくても、こまめに水分を摂りましょう。食事は、できるだけ栄養バランスを考えながら、用意した備蓄品を計画的に消費します。
- 体調管理: 無理をせず、十分な休息を心がけましょう。体調の変化に気づいたら、早めに対応することが大切です。
- 衛生状態の維持: 手洗いやうがい、ウェットティッシュなどを活用して、可能な範囲で清潔を保ちます。簡易トイレを使った場合などは、衛生に特に注意が必要です。
- 情報の確認: ラジオやテレビなどで、自治体からの情報やライフラインの復旧状況などをこまめに確認します。
- 近所との連携: 可能な範囲で、近所の方と声をかけ合い、助け合える関係を築いておくことも重要です。
家族との話し合いが大切
在宅避難の準備は、一人で行うには大変なこともあります。ぜひ、ご家族と一緒に話し合いながら進めてください。
- ご自宅の安全は大丈夫か
- 必要な備蓄品は何か
- 連絡方法はどうするか
- 体調が悪くなった時はどうするか
など、具体的な状況を想像しながら話し合うことで、不安が減り、いざという時に落ち着いて行動することにつながります。
どこに相談すれば良いか
災害対策や避難について不安なこと、分からないことがある場合は、一人で悩まずに相談しましょう。
- お住まいの市区町村の役場(防災担当課や高齢者福祉担当課など)
- 地域の社会福祉協議会
- 民生委員・児童委員
- 地域の自治会や町内会
など、様々な窓口や地域の方がサポートしてくれます。地域の情報を集めることも、大切な準備の一つです。
まとめ:在宅避難の準備は安心への一歩
災害が起きた時に、ご自宅で安心して過ごせるかどうかは、事前の準備にかかっています。食料や生活用品、医療品などの備蓄、そして情報の確保や家族との話し合いを進めることが、大きな安心につながります。
一度に全てを準備するのは難しく感じるかもしれませんが、まずはできることから、一歩ずつ始めてみましょう。このガイドが、皆様の安心できる避難計画の一助となれば幸いです。