高齢者のための災害時安否確認ガイド:離れた家族と連絡を取る備え
高齢者のための災害時安否確認ガイド:離れた家族と連絡を取る備え
大きな地震や台風などの災害が発生したとき、ご自身や離れて暮らす家族の安否が心配になるのは当然のことです。特に高齢者の方の場合、体のことや情報収集の手段などから、安否確認や連絡の取り合いに難しさを感じることもあるかもしれません。
このガイドでは、高齢者ご本人とそのご家族のために、災害が起きたときにどのように安否を確認し、離れた家族と連絡を取り合うかの具体的な方法と、日頃からできる備えについて分かりやすくご説明します。
なぜ災害時の安否確認が大切なのでしょうか
災害時は、電話回線がつながりにくくなったり、停電でスマートフォンが使えなくなったりと、普段当たり前に使っている連絡手段が使えなくなることがあります。
このような状況で、ご自身が無事であることを家族に知らせること、そして家族の安否を確認することは、お互いの安心につながり、その後の避難や生活再建に向けた大切な一歩となります。特に、一人暮らしの方や、ご家族と離れて暮らしている高齢者の方にとっては、安否確認の手段を事前に考えておくことが非常に重要です。
災害時に使える安否確認・連絡方法を知りましょう
災害時には、様々な連絡手段が考えられますが、それぞれに特徴があります。ご自身の状況や家族の環境に合わせて、いくつかの方法を組み合わせて備えておくことをお勧めします。
1. 災害用伝言ダイヤル(171)を利用する
「災害用伝言ダイヤル(171)」は、大きな災害が発生したときにNTTが提供する音声による安否確認サービスです。
- 使い方:
- 「171」に電話をかけます。
- ガイダンスに従って、メッセージを「録音」するか「再生」するかを選びます。
- 連絡を取りたい相手の電話番号などを入力し、安否情報などのメッセージを録音したり、録音されたメッセージを聞いたりします。
- ポイント:
- 電話機があれば利用できます。スマートフォンだけでなく、固定電話や公衆電話からも利用可能です。
- 使い方がシンプルなので、事前に家族で練習しておくと良いでしょう。
- 毎月1日と15日、正月三が日、防災週間(8月30日~9月5日)、防災とボランティア週間(1月15日~1月21日)には体験利用ができます。
2. 災害用伝言版(web171)を利用する
「災害用伝言版(web171)」は、インターネット上で安否情報の登録や確認ができるサービスです。
- 使い方:
- パソコンやスマートフォンから「web171」のサイトにアクセスします。
- 連絡を取りたい相手の電話番号などを入力し、安否情報やメッセージを登録したり、登録されたメッセージを確認したりします。
- ポイント:
- 文字でメッセージを伝えられます。
- インターネット環境が必要になります。普段インターネットを利用しない方や不慣れな方は、この方法を主に使うご家族と役割分担を決めておくと良いでしょう。
3. 携帯電話会社の災害伝言板サービスを利用する
NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクといった各携帯電話会社も、それぞれ災害用伝言板サービスを提供しています。スマートフォンのアプリやウェブサイトから利用できます。
- ポイント:
- 各社の回線を通じて利用できます。
- 安否情報を文字で登録・確認できます。写真や動画を添付できる場合もあります。
- こちらもインターネット環境(データ通信)が必要です。普段お使いの携帯電話会社が提供するサービスについて、家族に確認してもらうと良いでしょう。
4. SNS(LINE、Twitterなど)を利用する
普段から家族や友人と連絡手段として使っているSNSも、災害時に安否確認の手段となることがあります。
- ポイント:
- 多くの人が利用しています。
- メッセージだけでなく、写真や動画、位置情報なども共有できます。
- ただし、インターネット回線が混雑するとつながりにくくなることがあります。また、サービスの提供状況は状況によって変わる可能性があります。
- 普段使い慣れていない方にとっては操作が難しい場合があります。
5. 地域の助け合いや自治体の取り組みを知る
災害発生直後は、電話やインターネットが使えないこともあります。そんな時は、地域での助け合いが大きな力になります。
- ポイント:
- お住まいの地域の自主防災組織や町内会などが、災害時に安否確認の活動を行う場合があります。
- 自治体によっては、避難行動要支援者名簿に基づいて、地域の関係者(民生委員、消防団、自治会など)が安否確認を行う体制を整えていることがあります。
- ご近所の方と日頃からあいさつを交わし、顔見知りになっておくことも大切です。
家族で事前に話し合っておくこと:大切な備え
いざという時に慌てないために、災害が起きる前にご家族で話し合っておくべき大切なことがあります。
- 安否確認の方法と優先順位を決める:
- 「最初は災害用伝言ダイヤルを試す」「それが難しければ携帯電話の災害用伝言板を使う」など、どの連絡手段から順番に試すかを決めておきましょう。
- インターネットに不慣れな方は「電話で災害用伝言ダイヤルにメッセージを録音する係」、スマートフォンを使い慣れているご家族は「インターネットでメッセージを確認する係」のように、役割分担を決めておくのも良い方法です。
- 連絡が取れなかった場合のルールを決める:
- 何度か試しても連絡が取れない場合、どうするかを決めておきます。例えば、「○日間連絡が取れなければ、事前に決めておいた親戚の家に連絡してみる」「避難所が開設されたら、家族で合流する場所を決めておく」などです。
- 自宅で安否を示すサインを決めておくことも考えられます。(例:無事であれば窓に黄色いタオルをかけるなど。ただし、地域のルールがある場合はそれに従いましょう。)
- 集合場所を決める:
- 自宅が被災してしまった場合や、避難が必要になった場合に、どこで家族が合流するかを決めておきます。まずは近くの指定緊急避難場所、そこが使えない場合は別の場所(広域避難場所、親戚の家など)を複数決めておくと安心です。
- 災害用伝言ダイヤルや災害用伝言版の使い方の練習をする:
- 体験利用期間などを利用して、実際に使い方を練習しておくことが重要です。電話番号の入力方法や、メッセージの録音・再生方法を確認しておきましょう。
- 連絡先リストを作成する:
- 家族、親戚、近所の方、お住まいの地域の役所・役場などの緊急連絡先リストを作成し、すぐに取り出せるところに保管しておきましょう。紙に書いておくこと、またスマートフォンなどに登録しておくことの両方をお勧めします。
地域の情報も積極的に活用しましょう
お住まいの自治体では、災害時の安否確認や避難に関する様々な情報を提供しています。
- 防災マップやハザードマップ: 避難場所や避難経路だけでなく、災害時の情報収集の方法や地域の連絡網について記載されている場合があります。
- 自治体のウェブサイトや広報誌: 災害時の情報伝達方法や、高齢者向けの支援策について案内されていることがあります。
- 地域の回覧板や掲示板: 地元の重要な情報が掲示されていることがあります。
これらの情報を積極的に確認し、日頃から地域の方々とのつながりを大切にすることも、いざという時の安否確認や助け合いにつながります。
まとめ:まずは一歩踏み出しましょう
災害時の安否確認や連絡手段の確保は、ご自身や大切な家族の命、そしてその後の生活を守るために欠かせない備えです。難しく考えすぎず、まずはできることから始めてみましょう。
- ご家族と「もしもの時、どうやって連絡を取り合う?」と話し合ってみる。
- 災害用伝言ダイヤル「171」の存在を知る、体験利用期間に試してみる。
- 連絡先リストを紙に書き出してみる。
こうした小さな一歩が、いざという時の大きな安心につながります。この記事が、高齢者の方とそのご家族の災害への備えの一助となれば幸いです。