災害時、介護・医療が必要な高齢者の備え:特別な用品や電力の準備
災害時、介護・医療が必要な高齢者の備え:特別な用品や電力の準備
いつ起きるか分からない災害に備えることは大切です。特に、ご自身やご家族に介護や医療が必要な方がいらっしゃる場合、普段の生活とは違う災害時には、特別な心配があるかもしれません。
「もしも災害が起きて、停電したら使っている医療機器はどうなるのだろう」「避難所に介護用品は十分にあるのだろうか」といった不安を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
このガイドでは、介護や医療が必要な高齢者ご本人と、そのご家族が、災害時にも安心して過ごせるように、具体的な備えについてご紹介します。焦らず、できることから一つずつ一緒に確認していきましょう。
1.普段使っている介護用品・医療機器を確認し、備蓄しましょう
災害時に困らないためには、普段の生活で使っている介護用品や医療機器をリストアップし、備蓄しておくことが重要です。
介護用品の確認と備蓄
使用している介護用品を書き出してみましょう。
- おむつ、尿とりパッド
- 清拭タオル、ウェットティッシュ
- 使い捨て手袋
- 口腔ケア用品(歯ブラシ、歯磨き粉、洗口液など)
- とろみ剤、栄養補助食品(普段使用しているもの)
- その他、体調に合わせて必要なもの
これらの用品は、最低でも3日分、できれば7日分程度を目安に備蓄しておくと安心です。置き場所に困る場合は、普段使いながら、使った分だけ買い足していく「ローリングストック」という方法もおすすめです。
医療機器と関連用品の確認と備蓄
命に関わる医療機器を使用している場合は、さらに慎重な準備が必要です。
- 酸素濃縮器、吸引器、人工呼吸器などの機器本体
- カニューレ、チューブ、マスクなどの消耗品、交換部品
- ストーマ用品(パウチ、皮膚保護剤など)
- 点滴スタンド、輸液ポンプ
- その他、治療に必要な機器や物品
これらの機器の予備や、数日分の消耗品を確保しておきましょう。購入先やメンテナンス業者の連絡先も控えておくと役立ちます。
2.医療情報と緊急連絡先を整理しましょう
災害時には、ご本人の医療情報や、緊急時の連絡先をすぐに伝えられるように整理しておくことが非常に大切です。
医療情報シートの作成
以下の情報をまとめたメモ(「災害時医療情報シート」などと呼ばれることもあります)を作成し、常に携帯することをお勧めします。
- 氏名、生年月日、血液型
- かかりつけ医の氏名、連絡先、病院名
- 病名、アレルギー情報(薬、食物など)
- 現在服用している薬の名前、量、飲み方(お薬手帳の写しでも良い)
- 既往歴(過去にかかった大きな病気や手術)
- かかりつけの歯科医、薬剤師
- 利用しているケアマネジャー、訪問看護ステーションの連絡先
- 障害者手帳や特定疾患医療受給者証などの情報
- 介護保険の情報
- 本人に伝えてほしいこと、配慮してほしいこと
このシートは、家族だけでなく、ヘルパーさんや避難所の方にも分かりやすいように、大きな文字で書くなどの工夫をしましょう。お薬手帳の写しを一緒に保管することも有効です。
緊急連絡先のリスト作成
家族や親戚、近所の信頼できる人、利用している介護・医療サービスの事業所など、緊急時に連絡を取りたい相手のリストも作成しておきましょう。電話番号だけでなく、可能であれば別の連絡手段(メールアドレスなど)も控えておくと安心です。
3.医療機器に必要な電源の確保を考えましょう
酸素濃縮器や吸引器など、電力が必要な医療機器を使っている場合、停電対策は最も重要な備えの一つです。
医療機器に必要な電力の確認
使用している医療機器がどのくらいの電力を必要とするか、取扱説明書で確認するか、メーカーに問い合わせてみましょう。連続使用可能な時間なども把握しておくと、対策を立てやすくなります。
停電時の具体的な対策
- 予備バッテリーや携帯型電源: 短時間の停電に備え、予備のバッテリーや、持ち運びできるポータブル電源を用意することを検討します。どのくらいの時間、機器を動かせるか確認しておきましょう。
- 自家発電機: 長時間の停電が予想される場合に有効ですが、燃料の準備や騒音、設置場所などの注意が必要です。使用方法を十分に理解し、安全に配慮して保管・使用する必要があります。
- 自治体や電力会社への事前登録: 医療機器を使用していることを、事前に自治体や電力会社に知らせておくことで、災害時の情報提供や、優先的な電源復旧の対象となる場合があります。お住まいの自治体や電力会社に確認してみてください。
- 充電が必要な機器の確認: 電動車いすや一部の吸引器など、充電が必要な機器は、常に充電を満タンにしておく、予備バッテリーを用意するといった対策が必要です。
電源確保が難しい場合の対応
自宅での電源確保が難しい場合は、事前に自治体や病院と相談し、災害時に電力供給が可能な施設(指定緊急避難場所、福祉避難所など)への避難が可能か、どのような支援を受けられるか確認しておきましょう。
4.避難所での生活に備え、相談先を知っておきましょう
福祉避難所について
一般的な避難所での生活が困難な場合、福祉避難所を利用できることがあります。福祉避難所は、高齢者や障害のある方など、特別な配慮が必要な方のために開設される避難所です。
利用できる対象者、開設場所、受け入れ態勢などは自治体によって異なりますので、事前に市町村の窓口や社会福祉協議会に確認しておきましょう。利用には事前の登録が必要な場合もあります。
避難所での生活で配慮してほしいこと
避難所では多くの方が共同生活を送ります。持病や介護の必要性、食事の制限など、配慮してほしい点をまとめたメモを用意しておくと、避難所のスタッフにスムーズに伝えることができます。
- 必要な介助の内容
- 服薬の時間や方法
- 食事の形態やアレルギー
- 睡眠時の姿勢や必要なもの(毛布、クッションなど)
- トイレや移動に関する配慮
- 認知症など、精神的なケアが必要な場合
プライベートな空間を確保するための簡易テントや、快適に過ごすための毛布やタオルなども、可能であれば準備しておくと良いでしょう。
困った時の相談窓口
災害時やその準備に関して分からないこと、不安なことがある場合は、一人で抱え込まずに相談することが大切です。
- お住まいの市町村役場: 防災担当部署や福祉担当部署が、避難計画や福祉避難所について情報を提供してくれます。
- 地域の社会福祉協議会: 高齢者や障害のある方の災害時の備えについて相談に乗ってくれます。
- かかりつけ医、ケアマネジャー、訪問看護ステーション: 医療や介護に関する専門的な立場からアドバイスを受けることができます。
災害時には、テレビ、ラジオ、自治体の広報、防災無線など、様々な手段で情報が提供されます。これらの情報に注意を払い、落ち着いて行動するように心がけましょう。
まとめ:できることから少しずつ、安心のための準備を進めましょう
災害は突然起こるかもしれませんが、事前の準備をすることで、不安を減らし、落ち着いて対応することができます。特に、介護や医療が必要な方にとっては、普段の生活を維持するための特別な備えが大切になります。
介護用品や医療機器の備蓄、医療情報の整理、そして電力確保の対策など、様々な準備が必要ですが、一度に全てを完璧に揃える必要はありません。まずは、普段使っているものを確認することから始めたり、ご家族やケアマネジャーさんと相談しながら、できることから少しずつ進めていきましょう。
地域の相談窓口も活用しながら、いざという時に備えて、ご本人もご家族も安心して過ごせるように準備を進めていきましょう。