高齢者と家族のための災害時のお金の備え:生活再建に向けた準備と公的支援
はじめに:災害時、お金の備えも大切です
いつ起こるかわからない災害に対し、食料や日用品の備蓄、避難場所の確認など、さまざまな準備を進めていらっしゃるかと存じます。加えて、災害時には「お金」に関することにも備えておくことが大切です。
災害によって収入が途絶えたり、予期せぬ出費が増えたりすることがあります。また、普段利用している金融機関が一時的に使えなくなる可能性も考えられます。特に年金収入を中心に生活されている高齢者の方にとって、災害時のお金の心配は大きな不安につながるかもしれません。
この記事では、高齢者の方とそのご家族が、災害時にお金に関して安心して過ごせるよう、具体的な備え方や、利用できる可能性のある公的支援について分かりやすくご説明いたします。
災害時に必要になる可能性のあるお金
災害が発生すると、普段の生活とは異なるお金が必要になることがあります。例えば、以下のようなものが挙げられます。
- 当面の生活費: 食料、飲料水、日用品(医薬品、衛生用品、衣類など)を買い足すための費用
- 交通費: 避難や移動のための交通手段を利用する費用(公共交通機関が利用できない場合、タクシーなど)
- 通信費: 家族や知人との連絡手段を確保するための費用
- 医療費: 持病の薬が不足した場合の再受診や、けが・病気への対応費用
- 住居に関する費用: 一時的な避難場所での滞在費用、自宅の応急修理費用、転居が必要になった場合の費用
これらの費用は、状況によって大きく変わりますが、ある程度の備えがあると安心です。
高齢者のための具体的なお金の備え方
1. 非常時の現金の準備
災害発生直後は、ATMが使えなくなったり、停電でクレジットカードや電子マネーが利用できなかったりすることがあります。そのため、当面の生活に必要な現金を自宅に備えておくことが重要です。
- 目安額: 数日分から1週間程度の生活費を目安に、ご自身の生活ペースに合わせて準備しましょう。少額のお札(千円札)や硬貨もあると便利です。
- 保管場所: 非常持ち出し袋に入れておくほか、自宅の安全な場所に分散して保管することも検討しましょう。家族にも保管場所を知らせておくと安心です。
2. 預貯金口座の確認と通帳・印鑑・カードの管理
災害時には、普段利用している金融機関の支店が被災することもあります。複数の金融機関に口座があるか、どこにいくら預けているかなどを把握しておくことが大切です。
- 通帳・印鑑の管理: 災害で紛失しないよう、通帳や届出印は貴重品と一緒にまとめて保管し、非常持ち出し袋のリストに入れておくか、すぐに持ち出せる場所に置きましょう。デジタル化が進んでいますが、通帳が必要になる手続きもまだ多くあります。
- キャッシュカード・クレジットカード: 非常時に必要になることがあります。カード番号や有効期限などの情報を控えておくことも有効です。紛失・盗難時の連絡先も一緒に控えておきましょう。
- インターネットバンキング: もし利用されている場合は、IDやパスワードの管理にも注意が必要です。
3. 重要な書類の管理と情報共有
通帳や印鑑だけでなく、保険証券、不動産の権利証、年金手帳、公的な手続きに必要なマイナンバーカードなども重要な書類です。これらを一箇所にまとめて、すぐに持ち出せるように準備しておきましょう。コピーを別の場所に保管したり、信頼できる家族と情報を共有したりすることも有効です。
- チェックリスト:
- 非常用の現金は準備しましたか。
- 通帳、印鑑、キャッシュカードの保管場所は決まっていますか。
- 重要な書類(保険証券、年金手帳など)はまとめてありますか。
- 家族とこれらの情報の保管場所や内容について話し合いましたか。
災害時に利用できる可能性のある公的支援
国や自治体は、被災した方々を支援するための様々な制度を設けています。全ての制度が高齢者の方に関係するわけではありませんが、知っておくことで、いざというときに役立ちます。
主な支援制度の例:
- 災害弔慰金・災害見舞金: 災害で亡くなられた方のご遺族や、住居に著しい被害を受けた方に対し、国や自治体から支給されるものです。
- 被災者生活再建支援制度: 災害により居住する住宅が全壊するなど、生活基盤に著しい被害を受けた世帯に対し、支援金が支給されるものです。
- 災害援護資金の貸付: 被災により生計を維持することが困難となった世帯に対し、生活の立て直しに必要な資金を貸し付ける制度です。
- 税金や公共料金の減免・猶予: 状況に応じて、所得税、住民税、固定資産税などの減免や、電気、ガス、水道料金の支払いの猶予措置などが取られることがあります。
- 各種補助金: 自宅の応急修理や、家具などの購入に利用できる補助金制度などが設けられることがあります。
これらの制度の詳細や利用条件は、災害の規模や被災状況、お住まいの自治体によって異なります。情報収集の方法としては、テレビ、ラジオ、自治体の広報誌やウェブサイト、地域の掲示板などがあります。
もしインターネットの利用に不慣れな場合は、お住まいの市区町村の窓口や、民生委員、社会福祉協議会などに相談してみることをお勧めします。これらの機関で、現在利用できる支援制度について教えてもらうことができます。一人で悩まず、専門の窓口に相談することが大切です。
家族との話し合いの重要性
災害時のお金の備えや、利用できる支援制度について、ご家族と事前に話し合っておくことは非常に重要です。
- 情報の共有: 通帳や印鑑、重要な書類の保管場所、利用している金融機関の情報などを共有しておきましょう。
- 手続きの協力: 災害発生後、ご自身で手続きを行うことが難しい場合、家族が代行する必要が出てくるかもしれません。委任状の作成や、必要な手続きについて事前に話し合っておくとスムーズです。
- 相談相手: 金銭的な不安や手続きの不明点について、気軽に相談できる家族がいることは大きな安心につながります。
まとめ:今できる一歩を踏み出しましょう
災害時のお金の備えは、命を守る直接的な行動とは少し異なりますが、その後の生活を立て直し、安心して暮らしていくために欠かせない準備です。非常時の現金の準備や、通帳・書類の管理など、今日からできる小さな一歩から始めてみましょう。
そして、もしお金のことで不安なことがあれば、一人で抱え込まず、ご家族や信頼できる方、またはお住まいの自治体の窓口などに相談してください。適切な情報と支援を得ることで、災害への備えはより確かなものになります。この記事が、皆さまの安心につながる一助となれば幸いです。